所得税確定申告の仕組み
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1, はじめに
今年も所得税の確定申告の時期になってまいりました。個人事業で開業されている先生は1年間の総決算の時期です。医療法人で経営されている先生も、所得税の確定申告をしなければいけない(した方が良い)ケースがあります。
「確定申告って皆しないといけないの?」「申告しないとどうなるの?」
「車を売却したけれど、これも申告しないといけないの?」
所得税の仕組みは複雑で、分かりづらい面があります。顧問税理士に任せているので知らなくてもいい?
所得税が増税傾向にある昨今、実は節税や資産形成をする際、所得税の仕組みを知っておくのはとても大切。
今回はそのような方のために「所得税確定申告の仕組み」を解説します。
2, 確定申告とは?
所得税の確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までの所得と納める所得税を計算し、
原則、翌年2月16日から3月15日の間に所轄税務署に申告・納税することをいいます。
払いすぎた税金の還付を受けるための還付申告は例外です。
還付申告の場合は1月1日から申告が可能で、申告可能となった日から5年以内であればいつでも還付申告をすることができます。
3, 確定申告をしないとどうなるの?
確定申告が必要な人が期限内に申告しなかった場合、納めるべき所得税額に対し、
次のようなペナルティがあります。
・最高20%の無申告加算税が課税せられる
・最高14.6%の延滞税が課せられる
加算税と延滞税ダブルでかかってきます。
また、悪質な場合(事実の仮装隠蔽による無申告)は、無申告加算税に代えて、
40%の重加算税が課せられますので、故意に申告しないことは非常にリスクが高いということになります。
青色申告者は、期限内に申告しないとその申告に係る青色申告特別控除額が65万円(55万円)から10万円に引き下げられ、さらに2年連続で期限内申告を行わなかった場合、青色申告の承認が取り消されます。
申告が必要な人は極力期限内に申告することをお勧めします。
4, 所得税の確定申告をしないといけない人とは?
確定申告が必要な人は以下の4つに分類されます。
1)給与所得がある人で、年収2000万円超の人、
2か所以上から給与がある人で副業が20万円以上ある人等一定の人
2)公的年金等のみある人で、公的年金等の収入が400万円超の人
3)退職所得のある人で退職所得の受給に関する申告書を提出していない人
4)1~3以外の人
医療法人でクリニックを経営されている方は・・・
1(給与所得がある人)をもとに確定申告するか否かを検討します。
個人事業でクリニックを経営されている方は・・・
4(1~3以外の人)を前提に考えることになります。
4の場合、確定申告する必要があるケースは下記です。
<次の計算において残額がある>
ⅰ)各種所得の合計額から所得控除を差し引いて課税される所得金額を求める
ⅱ)課税される所得金額に所得税率を乗じて所得税額を求める
ⅲ)所得税額から配当控除額を差し引く
つまり、所得を合算し各種控除額を控除してもなお所得税額が出た場合に確定申告をする必要があります。
したがって、所得があるから必ず申告しないといけないわけではありません。
5, 所得はなぜ10種類もあるの?
個人の所得は10種類あります。
10種類それぞれに所得の計算の仕方、税金のかけ方、税率が違うのです。
法人税の場合は、何種類も所得(利益)があるわけではありません。
なぜ所得税の場合、10種類もあるのでしょうか?
その理由は、どんな形で収入を得ても公平に課税されるように調整するためです。
例えば、継続的に収入を得られる事業所得と、懸賞金や満期保険金等たまたま得た収入(一時所得)とが
同じ方法で課税をされると不公平になるという考えです。
所得の種類
① 利子所得
② 配当所得
③ 不動産所得
④ 事業所得
⑤ 給与所得
⑥ 退職所得
⑦ 譲渡所得
⑧ 山林所得
⑨ 一時所得
⑩ 雑所得
6, クリニックの経営で関係の深いもの
クリニックの事業活動の中で得た利益には、どのように所得税が課税されるのでしょうか。
診療収入、医業付随収入
医業収入は、診療収入と、金属売却や自動販売機収入などの医業付随収入とがありますがどちらも事業所得に分類されます。
事業所得は税制で定義されています。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
ただし、不動産の貸付や山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。
つまり、その業務が「事業」として行われているかがポイントとなります。
反復継続しているか、その収入で生活の糧を得ているか等が判断の基準になります。
同じように反復継続していても、それが事業的規模と判断されれば事業所得になり、事業的規模でなければ雑所得になります。
学校医や産業医としての報酬
学校医や産業医は、医師や歯科医師個人が市町村や企業から委託を受けて任務にあたるものですので、
事業所得ではなく給与所得に該当します。
したがって、これらの収入もクリニックの収入に入れて経費を引くと”間違い”ということになります。
別途、市町村や企業からの給与に係る源泉徴収票を受け取って確定申告の給与所得に入れなければいけません。
給与所得に該当するか否かは、相手先と雇用関係にあるか否かで原則判断します。
講師料、原稿料
例えば、学校で講師をして講師料も貰った場合や雑誌等に記事を掲載して原稿料を貰った場合は雑所得に該当します。
車の売却
個人事業主がクリニックの事業用で使用していた車を売却して売却益が出た場合(車の買い替えで下取りに出した場合も含む)、
これも事業所得になるのでしょうか?
間違えやすいですが、これは譲渡所得になります。
事業から直接・付随的に生じた所得ではなく資産の譲渡による所得であるという考え方です。
プライベートで使用している車は生活用であれば非課税です。レジャー用なら課税対象です。
同じ車でも用途で課税関係が変わるのです。
< 車の譲渡所得 >
売却金額-(売却した車の取得費+譲渡費用−50万円)
※取得費 購入金額-減価償却費累計額
※譲渡費用 リサイクル料など売るために直接かかった費用
不動産・株式等以外の譲渡所得には50万円の特別控除があります。
つまり、売却益から50万円を控除できますので、
売却益が50万円以下なら所得税は出ない、この所得に関して申告しなくても良いということになります。
所得税の還付加算金
所得税が還付される場合、還付申告から還付入金されるまでの期間に応じた利子(還付加算金)が還付金と一緒に入金されます。
申告漏れが多いですがこの還付加算金は雑所得になります。
保険の満期金、解約返戻金
生命保険等が満期または途中解約して保険金を受け取った場合、一時金で受け取れば一時所得になります。
年金形式で受け取った場合は、毎年受け取った額が継続的に受け取るので雑所得になります。
一時所得には、譲渡所得で述べたのと同じように50万円の特別控除があります。
したがって、保険金の額が50万円以下なら所得税は出ない、この所得に関して申告しなくても良いということになります。
医療法人で経営している先生が、自己の医療法人に動産や不動産を貸している場合
事業所得・不動産所得もしくは雑所得になります。
どちらに該当するかはその規模によります。
税務調査で否認されるケースもあるので雑所得とする場合が一般的です。(事業所得にできる方法もあります)
7, 最後に
以上が所得税確定申告の仕組みです。
他にも損益通算や所得控除、税額控除等最終的な税額が算出できるまでのプロセスがありますので
また次回以降解説致します。
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