協会けんぽと医師・歯科医師国保はどう違うのか?
Contents
1.医師・歯科医師国保とは?
クリニックを経営する先生方の中には、採用活動時に「社会保険」の項目が求職者からよく見られていることはご存じの方も多いのではないかと思います。
その中でも求職者が特に気にしていると言われているのが「協会けんぽか医師・歯科医師国保か」についてです。本日は協会けんぽと歯科・医師国保の違い、それぞれのメリット・デメリットについてお伝えいたします。
2.医師・歯科医師国保とは?
健康保険には、政府が管轄する協会けんぽ健康保険と各職種ごとに存在する組合管掌の健康保険、さらに個人事業主や無職の方などが加入する国民健康保険があります。
国民健康保険は、市町村管轄の国保と職域国保に分類され、医師・歯科医師国保は、医師・歯科医師会が管轄する職域国民健康保険の一種です。
医療関係職域国保では他に薬剤師国保などがあり、その専門の診療科目ごとに各組合が管掌する国民健康保険に加入しているのが一般的です。
職域国保は規約により、独自の制度を設けることが一定の範囲で許されており、医師・歯科医師国保についても、協会けんぽ健康保険とは異なるさまざまな特色があります。
2.協会けんぽと医師・歯科医師国保の比較
① 出産手当金
法律により女性には出産前6週間(多胎の場合は14週間)、出産後8週間について、休業することが認められています。
ただ、仕事をお休みするわけですから、その期間、会社から給料は出ません。
その間の所得の一部を補償する制度として協会けんぽ健康保険に存在するのが出産手当金です。
支給額はおよそ給料の67%です。
医師・歯科医師国保においては出産手当金に代わる制度はありません。
母体保護のためにも上記の期間はお休みせざるを得ない状況であることを考えると、所得補償の有無は大きな意味を持っています。
(※出産一時金はどちらの制度にも存在します。)
② 傷病手当金
業務以外でケガや病気をされた場合に、お休みせざるを得ない状況となった場合の所得補償として傷病手当金があります。
◆協会けんぽの場合
3日の待機期間経過後の労務不能によりお休みされた日について、給料のおよそ67%が支給されます。医者による、労務不能の証明を頂ければ、自宅での療養であっても支給が認められます。労務不能状態が継続する限り、最長1年半に渡って支給されます。
◆医師・歯科医師国保の場合
医師・歯科医師国保にも傷病手当金制度はありますが、適用は入院した場合に限られます。
また、給付額も1日あたり1,000円~3,000円、支給限度期間90日~180日と定めている医師・歯科医師国保が多いようです。
③ 産前産後休業期間及び育児休業期間中、保険料取り扱いについて
産前産後休業期間(原則14週間)と、その後の育児休業期間(原則子どもが1歳に達する前日まで)中、協会けんぽ健康保険の場合は保険料が全額免除されます。厚生年金・健康保険料ともに免除されます。
※厚生年金については免除期間中もお休みされる前の報酬に応じた保険料が納付されたものとみなされ、年金額に反映されます。
一方、医師・歯科医師国保の場合は、雇用契約が継続している以上は原則として休業期間中も保険料は支払い続ける必要があります。
④ 保険料比較
協会けんぽ健康保険の保険料は収入に応じた定率負担、医師・歯科医師国保の保険料は定額負担となっています。
協会けんぽ健康保険の場合は、収入に応じて保険料も高くなる特徴を持っています。
また、賞与についても医師・歯科医師国保は保険料負担はありませんが、協会けんぽの場合は賞与額およそ5%が保険料として発生します。
次に、医院の保険料負担についてですが、医師・歯科医師国保は職員のみが保険料を納付するのに対し、協会けんぽ健保保険は職員が納付する保険料と同額の保険料負担が発生します。
⑤扶養
国民健康保険(医師・歯科医師国保)には被扶養者の概念がありません。
そのため、家族会員に対しても保険料が発生し、社会保険に加入していない家族が多いと、その分保険料負担が大きくなります。
協会けんぽ健康保険は、被扶養者に対して保険料は発生せず、被保険者本人のみの保険料となります。
3.まとめ
これまで述べてきたように、それぞれメリット・デメリットがありますが、従業員側から見ると所得補償や保険料免除制度のある協会けんぽ健康保険の方がメリットが大きいと言えます。
そのため、求人を出した場合、同程度の給与条件であれば協会けんぽ健康保険に加入している医院・歯科医院に応募が集まる傾向にあります。
ただ、事業主側の社会保険料負担は増加しますので、協会けんぽ健康保険に加入を検討されていらっしゃいましたら、アップパートナーズグループの税理士や社労士にお気軽にご相談頂ければ幸いです。
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