承継にも影響を与える医療法人の出資持分対策
医療法人の出資持分は承継において大きな意味を持ちます。
評価方法とその対策を紹介します。
Contents
1.そもそも「持分」って?
医療法人の「持分」とは、一言で表せば医療法人の「財産権」のことです。出資持分あり医療法人を承継する場合において、後継者へ医療法人を引き継ぐ際や理事長先生の相続が発生した際に、この持分の評価額が大きな問題になります。
平成19年4月1日の医療法改正以降は、持分あり医療法人が設立できなくなりました。しかし、令和3年は医療法人社団総数5万5,931件のうち、持分あり医療法人が3万8,083件(68・1%)であり、いまだにその割合は高いといえます。
2.出資持分の評価方法
持分あり医療法人から、持分なし医療法人に移行することも可能です。ただし、出資者は自らの財産権を放棄することになり、また、医療法人側に対しても多額の贈与税が課され
てしまいます。
なお、医療法人の出資持分の評価は、次のような方法で行われます。
(1)純資産価額方式
評価する医療法人の貸借対照表の資産と負債の差額、つまり、純資産を時価評価します。
(2)類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、①株価 ②利益 ③配当 ④純資産を判断要素にして評価する方法です。事業内容が類似した上場会社を参考にして計算されますが、医療法人は医療法上配当が禁止されているなど、会社法上の会社とは異なる特色があります。そこで③配当を除いた計算式で決定されます。
(例)
類似業種比準価額×0・75+ 純資産価額×0・25
3.出資持分の対策は?
それぞれの評価方式における対策として、評価額を圧縮させる一例をご紹介します。
【純資産価額方式の対策】
純利益が蓄積しにくい仕組みづくり
・生命保険の活用
・MS法人による不動産や医療機器の賃貸
・物販業務をMS法人へ移行
・役員報酬の引き上げ
・理事長の退職金支給
資産の評価額の圧縮
・遊休土地にテナント物件を建てて賃宅地する
・建物の建て替え
ただし、建物の建て替えには注意が必要です。建物取得後3年以内は評価額が下がりにくいため、贈与等実行時期の3年より前に建物を取得しておく必要があります。
【類似業種比準方式の対策】
直近の利益を圧縮する
・退職金の支給
・役員賞与の支給
・含み損のある資産の売却(不動産、有価証券など)
・回収不能の債権の放棄
会社規模の見直し
会社規模は、その法人の従業員数、直近一年間の売上額、直近の総資産額で判断されます。一般的に、会社規模が大きいほど評価が下がりやすくなります。特に、従業員数が70名を超えるか否かで評価額に大きな違いがあります。
4.比準要素1の会社に注意
医療法人の場合、大まかにいうと、2期連続で赤字(法人税の課税所得がマイナス)にすると、純資産価額で評価する割合が高くなってしまい、思わぬ高値になってしまいます。
贈与等を実行する2期前は少額でもいいので利益を残すようにしましょう。不動産の売却益や保険の解約益等の突発的な利益は、算定に入りませんので注意が必要です。医院の通常利益が残るようにしましょう。
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