外国人を雇用する上での注意点や制限、労務管理を解説します!
Contents
1.はじめに
日本の労働市場は少子高齢化による、慢性的な人材不足となっています。
忌まわしいコロナ混乱期もとりあえず落ち着いたとされる今日において、国際的なヒトやモノの往来は改めて活性化し、外国人労働者の雇用は労働力確保の上で重要なウエイトを今後も占めていくと思われます。
そのような中で、外国人労働者の雇用については、日本人の場合のそれとは異なる管理や制限に注意しなければならない点がありますので今回は、そこに焦点を当てていきましょう。
2.ビザ(在留資格)の種類と就労制限
日本で就労するためには、一定の在留資格が必要です。「永住者」や「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」といった就労制限のないものから、いわゆる「就労ビザ」という業務に応じた種類が細分化されており、その範囲内で許可された業務でなければ就労できないものまで様々です。
クリニックでの雇用の場合は「医療」がメインで、医療事務や歯科助手等はその具体的な業務内容にもよりますが「技術・人文知識・国際業務」に基づく就労になると思われます。すでに「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている方を中途採用した場合でも、実際にクリニックでその方が行う業務が、この在留資格が求める「専門性」と合致しているのかが不透明な場合がありますので、出入国管理局へ「就労資格証明書」の申請を行い、「貴院での就労が今の在留資格で問題ない」旨の行政のお墨付きをもらっておくことをおすすめいたします。
以上のように、ビザ(在留資格)の種類により就労の可否やその範囲が定められています。
万が一、その在留資格に対応する活動に属さない就労活動を行った場合は、本人はもとより、それを雇用した事業主も不法就労助長罪として罰則が科される場合があります。
よって、外国人を採用する場合は、「在留カード」の記載内容をきちんと確認しましょう。
①在留カードに穴は空いていないか
穴が開いている在留カードは「無効」です。
②就労制限の有無
表面の真ん中辺りに記載があります。就労ビザの場合は「在留資格に基づく就労活動のみ可」、留学生などは「就労不可」となっています。
③資格外活動許可欄を確認
上記②で「就労不可」となっている場合は、裏面下部の「資格外活動許可」を確認し、「許可:原則週28時間以内、風俗営業等の従事を除く」の記載があれば、パチンコ店やキャバクラ等風俗営業等以外であれば時間制限(どの曜日からカウントしても週28時間以内)を守った上で従事することができます。
④在留期間を確認
在留資格には有効期限がありますので満了日を確認しましょう。満了日が近づいており、更新が必要なのであれば満了日の3ヶ月前から更新手続きが可能です。更新手続きもせず、満了日以後も就労を継続した場合は不法就労となります。
⑤パスポートによる本人確認
偽造カードを所持している可能性もあるので、パスポートと在留カードの内容を照合し、本人のもので間違いないことを確認しましょう。
3.外国人の労務管理
外国人といえども、当然、労働基準法その他、労働関係法令は適用されますので、原則1日8時間、週40時間以内の法定労働時間及び週1日の法定休日付与を守るようにしましょう。これを超えて就労させる必要がある場合は、日本人同様に、就業規則上の時間外・休日労働命令条文に基づき、さらに時間外労働・休日労働に関する協定書(36協定)を事前に労基署に届出て、その範囲内で就労させることは可能です。
ただし、在留資格が「留学」や「家族滞在」で資格外活動許可(包括)に基づいた就労の場合は上記に関わらず、週28時間以内の就労を厳守しなければなりません(学校が長期休学中の場合は1日8時間以内)。
労災保険や雇用保険についても、その加入要件に日本人と差異はありませんので適正な加入を行います。社会保険についても同様です。
ただし、年金については、比較的短期間で母国へ帰らなければならない事情等により厚生年金加入期間が短く、受給資格期間10年を満たさない場合は掛け捨てとなってしまうリスクを避けるため、脱退一時金制度があります。条件は下記の通りです。
・日本国籍を有してない
・厚生年金被保険者資格を喪失している
・厚生年金加入期間が6ヶ月以上ある
・老齢年金の受給資格期間10年を満たしていない
・障害年金等含め、年金を受ける権利を有したことがない
・日本国内に住所を有してない
・厚生年金被保険者資格を喪失して2年以上経過していない
60ヶ月(=5年)を上限に納付した厚生年金保険料相当額(本人分のみ)が還付されるイメージです。留意点としては
・脱退一時金を請求した期間はすべて、年金加入期間ではなくなります。
・日本年金機構が脱退一時金請求書を受理した時点で住所がまだ日本にある場合は返戻されますので転出届が完了後に請求を行うこと
となります。
4.さいごに
外国人を雇用することで「人員不足」問題は解消できる場面もあるかと思います。
ただし、日本人は勤勉とよく評価される一方で、外国人の方々は、肌感ではありますが、やや時間の部分等でルーズな印象を受けます。
言葉や宗教はもちろん、文化や慣習に違いがあることを前提に、日本人とは異なる尺度で相手の価値観に歩み寄る姿勢を示していくことも必要かもしれません。
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