高齢者の身元保証サービスで気をつけるべきポイントとは?
1.「高齢者身元保証サービス」の現状
最近、私(弊社司法書士)が後見人に就任している高齢者の方が、介護サービスのある老人ホームに入居することになりました。契約の際に、施設から入居の条件は、親族の「身元保証人」をつけること。もし、引き受けてくれる身元保証人がいない場合は、「保証会社」と契約をするように言われました。
私は後見人ですが、親族ではないことと、万一の場合の損害賠償については、法律で本人の財産の範囲でしか支払うことが出来ません。
施設が身元保証人を求める理由
施設側としては、例えば、施設内の高価な備品を本人が壊してしまった場合の弁償や、退去の際の居室の原状回復の履行などを行うために、本人以外の「身元保証人」を求めるケースが多く見られます。
しかし、近年は、保証人を頼める親族がいないおひとり様に向けて、身元保証や見守り、生活支援、死後の事務手続まで引き受けるサービスを提供する一般社団法人などが軒並み増えているのです。
もちろん、高齢者が安心して施設に入居するための保証サービスは、とても良いものですが、中には悪質な業者が、預かり金を横領するケースや倒産してサービスが受けられなくなるケースも散見されます。
実は、このように高齢者の大切な財産を預かり、様々なサービスを担う身元保証会社には、その会社を監督する官庁がなく法整備も進んでいないのが現状です。
現に2016年に高齢者身元保証サービスを展開していた日本ライフ協会が会員である高齢者から預かったお金を私的流用するなどずさんな経営により、12億円の負債を抱えて破綻したという事件がありました。驚くべきは、この日本ライフ協会は、公益認定を受けた公益法人だったということです。内閣府の監督下にあったにもかかわらず、犯罪行為を未然に発見できずに、会員からの預かり金2億7000万円が消えてしまいました。多くの会員から多額のお金を預かる会社については、預かり金の保全を図る必要があります。
法整備が一日も早く進むこと、安心して保証会社を利用できるようになることを期待しつつ、保証会社の利用にあたり、まずは、概要をみていきましょう。
2.身元保証会社が行う主なサービス
業者によって、提供するサービスの組み合わせは異なります。
①日常生活支援サービス
見守りを含め、病院の付き添い、買い物代行、緊急時の親族への連絡等
②身元保証サービス
医療機関の入院時や介護施設への入所の際の費用の支払いなどを保証
③死後事務サービス
入院費等の清算、ご葬儀、遺品整理や居室の原状回復など
次に、どういった場合にトラブルが起きやすいのか?をあげてみます。
3.トラブルになるケース
①不当に高額な請求
高齢者身元保証サービスを提供する会社のサービス料金は一定の決まった基準やガイドラインがありません。あくまで、会社と高齢者個人との契約でサービスの内容とその価格が見合ったものであるか?は当事者自身が判断しなければなりません。
高齢者の場合、他社との比較検討をせずに業者が言われるままに必要でないサービスまで追加していくことで、思った以上の金額を請求されるケースが多く見られます。
②契約通りのサービスが提供されない、解約できない、サービスの内容を途中変更された
2023年総務省が行った身元保証サポート事業の実態調査によると、サービス提供にあたり、契約書を作成している業者は90%だったが、費用や解約時の対応など重要な項目を説明する資料を作成していない業者は、79%にものぼっています。
これでは、利用者は自分が契約したサービスの内容や解約方法などを確認できず、業者に言いなりにされてしまう恐れがあり、対等な契約とは言えません。
③高額な預託金を請求された
また、利用料などを事前に預かるという名目で高額な預託金を請求されるケースもあります。総務省の調査では、預託金を事務所の金庫で保管しているケースや業者の代表者個人の口座で管理されていたケースなど、金銭管理がずさんな業者も見られました。
④業者に金銭を贈与する内容の遺言書を書かされた
もちろん、本人の意思で業者へ寄付を行うことは、問題がありませんが、本人の意思に反して寄付をさせるケース、遺言書を書かせているケースがあり、本人や死後に遺族とトラブルになっています。
⑤高齢者が認知症で判断能力が不十分になった後も成年後見制度へ移行しない
見守り契約をしていたにもかかわらず、認知症の進行などにより、判断能力が低下している状態のまま成年後見人が選任されず、不要な利用料を払い続けていたケース。
次は、どのような会社を選べばより安全なのか?を考えてみたいと思います。
4.問題点と契約時に気をつけたいポイント
①基準がないので、会社によってサービスの内容や価格が異なる
・サービスの内容が明瞭でわかりやすい内容か?
・契約を急かされていないか?
・契約書や重要事項説明書などが整えられているか?
・契約時に第三者(親族、弁護士、ケアマネージャー等)の立会を推奨しているか?
・他社数社のサービス、料金を比較検討したか?
・寄付や贈与などを依頼されているか?
・不明な点を丁寧に説明してくれるか?
・必要なサービスプランを作成してくれるか?
(気の進まないサービスを勧めていないか?)
・過大な預託金を要求されていないか?
・預託金の管理方法の説明があるか?その方法は安全か?
・解約時の説明及び返金についての説明はあるか?
・苦情などの対応窓口があるか?
②支払い可能な範囲を超えて高額になりやすい
・本当に必要なサービスか?公的サービスによる代替の余地はないか?をケアマネージャー等に相談する
・自分の財産、収入の範囲で継続的に支払いができるか?を確認する
・契約の変更や中途解約ができるのか?を確認する。
③契約内容の履行を確認しにくい
・親族などに契約内容を伝えておき、定期的にサービス内容や請求をチェックしてもらう
・認知症などにより、判断能力が低下した場合に備えて、任意後見契約を結んでおく
(※任意後見契約は、元気なうちに将来の後見人を選んで契約しておくこと。判断能力が低下すると任意後見人が財産管理や契約の履行などとチェックをしてくれる制度)
5.最後に
総務省が実態調査に乗り出し、政府も法整備に向けて準備を進められていくと思いますが、それまでは、身元保証サービスの契約にあたって、気をつけるべきポイントに注意しながら、より安全な業者との契約を進めていく他はありません。
もし、事業者とトラブルになった場合は、最寄りの相談窓口へ早めに相談することをお勧めします。
消費生活センター
法テラス
▼総務省|報道資料|身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 <結果に基づく通知>
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230807000167327.html
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