「海外資産」が税務調査のターゲットに!
Contents
1.はじめに
秋の本格的な税務調査の時期になりました。一般的に秋に来る調査は他の時期に比べて厳しい調査が多いと言われています。今年の7月に国税庁長官に就任した住澤整長官は、就任の抱負として「富裕層及び国際的な租税回避への対応」をあげました。2021年のデータによると、海外投資を行った個人に対する税務調査が2043件行われ、そのうち477件が富裕層をターゲットとしたものでした。その1件当たりの申告漏れ所得は平均で7836万円、追徴税額は2953万円で、所得税全体の平均追徴税額の9.1倍の税額でした。これがコロナで制限があった中での結果だということを踏まえると、今年の秋は、富裕層の海外資産を狙った税務調査が大幅に増加することが予測されます。
2.海外資産が税務調査のターゲットに!
現在、富裕層の海外資産を把握する手段としては、「財産債務調書」や「国外財産調書」などがありますが、これは自主的な提出を義務付けたもので、正当な理由がない場合の未提出には罰則もあるが、全ての該当者が申告しているかというと、まだまだ疑問符がつく状況です。では、国税当局は該当者の自主提出を手をこまねいて待っているのかというと、そうではありません!
パナマ文書やタックスヘイブンから連想されるように、海外資産に目をつけているのは、日本の国税当局だけではなく、他国の税務当局も同様なのです。そこで各国の税務当局が協調して、自国の納税者の所得情報を捕捉する仕組みが2017年に導入されました。
「共通報告基準」通称CRSと言われるものです。CRSを適用する国同士が年に1回、それぞれの国の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を交換するというものです。このCRS適用国は、今年の1月時点で112の国・地域で、今後の参加予定まで含めると165の国・地域まで拡大するようです。国外に開設した口座もほぼほぼ国税当局は掴んでいると認識したほうがよいでしょう。
更に、「国外送金等調書」というものがあります。これは、100万円超の越境送金をした場合に提出する調書ですが、この提出義務者は送金した納税義務者ではなく、送金を取り扱った金融機関です。つまり、海外資産については、ほぼ国税当局に「筒抜け」状態なのです。
3.まとめ
冒頭の国税庁長官の抱負や、世の中のDX化を踏まえると、この状況はますます強化されることが予測されます。まさに、「海外資産に逃げ場なし」です。海外資産を保有されている方はこの状況をご認識の上で、資産運用、事業強化を図って頂けたらと存じます。
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