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2024/02/06

今年4月から医師にも時間外・休日労働の上限が設けられます

1. はじめに

病床を持つ、病院や診療所におかれましては、入院患者様の急変や休日・夜間の緊急外来等に対応するため、当直・日直医体制を敷かれている場合も少なくないのではないでしょうか。これらの中で想定される業務は臨時的で比較的、短時間・軽度なものがほとんどで身体的・精神的な業務負荷が少ない一方で、拘束時間が長いことが特徴です。

ここで注意しなければならないことは、いくら業務内容が軽度であっても、いざ対応すべき事案(患者様の急変や緊急外来等)が発生すれば、即対応が義務付けられている状態での「待機」は、休憩時間を除き「手待ち時間」とも呼ばれ、特段の例外を除いてその時間は「労働時間」とみなされてしまうことです。

今年4月より、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた医師に対しても、一定の時間外・休日労働の上限が設けられることになりました。本日はその内容についてお伝えいたします。

 

2.時間外労働の規制内容

一般的な医業に従事する医師に適用される水準(A水準)

時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を締結した上で、

(1)時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満(例外あり)
(2)時間外労働と休日労働の合計が年960時間(※B・C水準等は1,860時間)

以下の範囲で時間外労働をさせることができます。

前述の通り、業務負荷は軽度でも宿直・日直拘束時間から休憩時間を除いた時間は「労働時間」とみなされる以上、昼間の通常業務や副業先での労働時間も通算した結果、上記時間を超過した場合は労働基準法36条違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
そこで、当直や日直業務について一定の要件を満たした上で事前に「労働基準監督署長の許可」を受けることで、その時間は労基法の労働時間の適用から除外することができます。つまり、この場合、当直・日直時間は労働時間に通算されませんので上限規制へ対抗する手段としては有益です。

労働基準監督署長の許可

「労働基準監督署長の許可」基準は以下が通達(S22.9.13基発17号、S63.3.14基発150号)で示されており、

①定時的な巡視や電話の収受、緊急事態に備えての待機など常態としてほとんど労働する必要がない勤務であること
②宿直・日直1回あたりの手当の額は宿日直に就くことが予定される同種労働者に対して支払われる賃金の1人1日平均額の3分の1以上であること
③宿直は原則として週1回、日直は月1回が限度であること
④宿直については、相当な睡眠設備が整備されていること

とされています。
さらに医師については

⑤通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること(通常勤務との時間的な空白が必要です)
⑥特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限ること(例として下記などが挙げられています)
 a.少数の要注意患者の状態変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む)や看護師等に対する指示や確認を行うこと
 b.外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間において、少数の軽症の外来患者やかかりつけ患者の状態変動に対応するため、問診等による診察や看護師等に対する指示、確認を行うこと

とされています。

 

3.注意点

繰り返しにはなりますが、労働時間から除外するためには上記条件を満たした上で「事前に」労働基準監督署長の許可(断続的な宿直又は日直勤務許可)を受ける必要があります。
いくら勤務実態が上記と相違なくとも、許可を受けてなければ労働時間に通算されますし、法定労働時間を超過すれば割増賃金の支払も必要です。

実際の許可申請においては、上記要件を満たしているかの確認のため、宿日直中の業務内容が記された宿日直業務日報、手当の額を算定するための各ドクターの労働条件通知書や賃金台帳、仮眠室の環境確認のための室内や設備の写真、巡視が必要な場合は経路図などの提出が必要です。また、書類の提出後、必ず現地調査があり、労働基準監督官による各ドクターへのヒアリングや仮眠室、巡回経路の目視の確認等が行われます。

申請から許可がおりるまでは、最低1ヶ月以上は要しますので、そのあたりも考慮の上ご検討ください。

 


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