知っているようで知らない!パートタイム従業員の有給休暇
1. はじめに
厚生労働省が発表した令和5年就労条件総合調査によると、労働者の年次有給休暇の取得率は62.1%と過去最高となりました。有給休暇を取得する風潮も根付いてきたのではないでしょうか。
ただ同様に「正社員の有給休暇は理解できるけど、パートタイム従業員の有給休暇はどうやって与えればいいの?」「どうやって管理したらいいの?」「そもそもパートタイマー従業員にも有給休暇ってあるの?」といった疑問の声も多く聞きます。今回は改めてパートタイム従業員の有給休暇の付与日数、賃金の計算方法について解説したいと思います。
2.有給休暇とは?
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち休んでも賃金が減額されない休暇のことです。
3.パートタイム従業員の有給付与方法
有給休暇は一定の要件をクリアした場合に、勤続年数に応じた日数が付与されます。
パートタイム勤務など、勤務時間や日数が少ない従業員については、勤務日数等に応じて比例的に付与されます。
比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日(※)以下の従業員です。それ以上の勤務者はフルタイム勤務者と同様の日数が付与されます。具体的には下表のとおりです。
(※)週所定労働日数が定まっていない場合は、年間の労働日数から算出
4.有給休暇分の賃金計算
時給者の有給休暇取得時の賃金は、以下3パターンのいずれかで算出します。
①通常の賃金から算出する
1週間や1か月で労働日数や時間が決まっている場合は、有給取得日の勤務シフト時間×時給で算出します。
例)時給1000円、5時間勤務の日に有給を取得した場合
1000円×5時間=5000円
②平均賃金から算出する
月のシフトに変動がある場合は、直近3カ月の平均的な賃金から算出することもできます。
具体的には「A:直近3か月間の賃金総額÷直近3か月間の総暦日数」あるいは、「B:直近3か月間の賃金総額÷直近3か月間の総労働日数×0.6」のいずれか高い方を平均賃金として、有給休暇の賃金とします。
例)3ヶ月間の賃金総額18万円、歴日数92日、総労働日数36日
A.18万円÷92=1957円(1円未満四捨五入)
B.18万円÷36×0.6=3000円
A<Bなので、1日3000円を有給休暇の賃金として給与計算を行います。
③標準報酬日額から算出する
社会保険で使用する報酬から算出した「標準報酬日額」を使う方法です。ただし、社会保険の加入と労使協定が必要なため、実務的に活用するケースは少ないです。今回は割愛します。
5.まとめ
2019年の改正労働基準法において、全ての企業に「年10日以上の有給休暇を付与する従業員に対して、1年以内に5日以上の有給休暇を取得させる義務」が課されました。この従業員にはパートタイム従業員も含まれます。
「パート、アルバイトには有給休暇はない」といった誤った解釈は、行政指導や従業員トラブルの基となってしまうため、正しい知識をもって有給管理に取り組んでいただければと思います。
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