医療スタッフの急募! その前に、大切な損益計算を!
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はじめに
適正な医療サービスを提供していくために必要となるスタッフの人員数は、診療科目や内容によって異なります。
診療所のスタッフの数は、無床診療所の場合、通常は看護師1人から3人、事務員1人から3人、パート職員を含めて総計2人から6人で十分と言われています。しかし、患者さんの増加やスタッフ欠員で新しいスタッフを採用しなければいけない状況になることもあります。当初の事業計画では、看護師、看護助手、歯科衛生士、歯科助手、医療事務などの人数や賃金などについては決めていらっしゃるでしょう。売り手市場の今、優秀な人材確保のためには、近隣の医療機関と引けを取らない賃金水準に上げることもお考えにならないといけないのかもしれません。しかし、人件費がかさみ、クリニック経営の収支に影響を及ぼすようなことは避けたいものです。今回は、歯科・病院・クリニックのスタッフを雇用する前に損益計算のポイントについて考えてみましょう。
相場の給与待遇を把握しよう
先生の医院のテリトリーだけでなく、通勤エリアの他の医院の給与額の相場を把握しましょう。
方法は、医療スタッフの専門サイトや求人サイトや求人誌をチェックしてみましょう。
医療モールなどのオープンにより新規開業が同じような時期にある場合、スタッフの奪い合いになることも予想されます。
求職者にとっては、すこしでも条件のいいところから応募してきますので、どうしても早く採用されたいのであれば給与待遇を現状よりも上げる必要が出てくるかもしれません。
スタッフ1名採用に必要な来院患者数は
具体例をもとに、収支をシミュレーションしましょう。
1ヶ月の診療実日数が23日のクリニックで、患者さんお一人当たりの診療科、診療単価を6,000円とします。
粗利率は、80%としましょう。
そこに、新しいスタッフ1人を月給20万円で雇用した場合の試算は、次のようになります。
月給200,000円 ÷ 粗利率80% = 採算ライン250,000円
250,000円 ÷ 診療単価 6,000円 = 41.6人 (1ヶ月に必要な人数)
41.6人÷ 23日 = 1.8人
つまり、1日あたり1.8人の来院患者が増えれば、採算は取れることになります。
また、スタッフを一人新規で雇用することで、既存のスタッフの残業代が減ったりする場合なども計算に入れると、より正確に計算できます。
雇用対象者の資格も加算も考慮する
雇用対象となる方が持っている資格などにより、一人あたりの診療単価が上がる(点数加算などが可能な資格により)ケースがあります。
保険師、助産師、PT、OT、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士など、資格者をかかえることによって、医院として収入を上げることが可能となるので、
それも考慮する必要があります。
採用によってもらえる助成金とは!
スタッフを新たに雇用することで助成金がもらえるケースもあります。
助成金のメリットは、雇用保険料を財源としているため、返済不要です。
受け取った助成金は売上ではなく粗利となります。
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母子家庭の母親の雇用に関する助成金
母子家庭の母などの就職困難者を対象に、ハローワーク等の紹介により雇い入れた場合に助成を受けることができます。
20歳未満の子を扶養している夫のいない女性、障害児(20歳以上でもOK)を扶養している夫のいない女性、精神又は身体の障害により長期にわたり働くことのできない夫を扶養している妻などが、この特定求職者雇用開発助成金の対象となります。
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キャリアアップ助成金
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成されます。対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、若者雇用促進法に基づく認定事業主における35才未満の者の場合について、「正社員化コース」では、1人あたりの支給額が5万円又は10万円加算されます。
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トライアル雇用奨励金
職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成を受けることができます。若者雇用促進法に基づく認定事業主が、35才未満の対象者に対してトライアル雇用を実施する場合、1人あたりの支給額が最大5万円(最長3ヵ月)となります。
助成金は返済不要のお金がもらえるわけですから簡単ではありません。受給するためには、要件をすべて満たすことが必要で受給まで時間がかかる助成金もあります。
即戦力がほしいなら 早目のアクションを!
売り手市場となっている今は、スタッフ募集の広告を出してもあまり応募がないのが現状です。ある医院は、ホームページのトップ画面に「スタッフ募集」と常時表示されている有様です。特に看護師は引く手あまたで、待遇条件が良くなっていること、新規開業が増えていることなど、募集しても1名~2名の応募しかなかったりするケースもあります。即戦力となる人材が不足しているのが実情です。募集を決めてから採用決定まで6ヶ月程度はかかるものと考えて、スピーディにアクションを起こすことが大切です。
まとめ
医院が忙しすぎるという理由から雇用を考えるのではなく、きちんと損益をシミュレートし、医院経営に影響しないかをチェックすることで採用すべきか、現有戦力でやっていかれるのか判断されることをおすすめします。
以上、歯科・病院・クリニックのスタッフを雇用する前に損益計算のポイントについてご説明してきました。
もっと詳しく知りたい、クリニックの経営や節税について的確なアドバイスをご希望の方はご相談を随時お受けしておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。
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