年度途中の退職者、源泉徴収票はどうしたらいい?
はじめに
「源泉徴収票」と聞くと、年末調整のときに提出するものですが、まずは「源泉徴収制度」を理解しておく必要があります。
スタッフに給与やボーナスを支給するときに、社会保険料や所得税を引いて差引支給額を振り込みます。
差し引いた所得税は、クリニックがスタッフに代わって国に納付する仕組みのことを「源泉徴収制度」といいます。
所得税を源泉徴収して国に納める義務のあるクリニックが、源泉徴収義務者です。
給料の他に、司法書士や弁護士等の報酬にも源泉徴収制度があります。
原則としてクリニックは給料日の翌月 10 日までに税務署に所得税を納めなければなりません。
それでは、年度の途中に事情によってスタッフが退職した場合、源泉徴収票の発行は、いつまでに発行するのが適切なのでしょうか。源泉徴収のポイントについての基本を押さえておきましょう。
1.源泉徴収票とは?退職者への発行はいつ?
源泉徴収票とは、クリニックが作成してスタッフに交付する書類のことです。その年における給与額・社会保険料・所得税が記載されます。クリニックが支給した本人の給与等の金額を証明するための書類です。
年度の途中で退職したスタッフには、最後の給与を確定させてから、発行するようにします。次の勤め先で年末調整する場合や本人が確定申告するときに使用されます。退職したスタッフから年末調整を行う11月から12月に発行を依頼されるケースが多いですが、退職の都度発行したほうが忘れずにすみますし、次の職場での年末調整がスムーズにはこびます。
2.源泉徴収票の作成方法
最近では、給与計算ソフト等を利用して給与計算をされているクリニックが増えています。
ほとんどのソフトは、月々の給与計算データから自動的に集計し、同一の様式で「給与支払報告書」と「給与所得の源泉徴収票」を複写で書けるように設定されていますので、パソコンに接続しているプリンターから簡単に印刷ができます。
それに対して、手作業で給与計算をされているクリニックにおいては、退職者の各月の給与や社会保険料などの集計を行い、源泉徴収票も手書きで作成する必要があります。
源泉徴収票は、スタッフが不動産を購入したりするときなど、収入証明として使用されることもありますから、間違いのないように注意して作成するようにしましょう。
3.法令について
源泉徴収票は退職者(スタッフ)が交付の請求をしなくても、事業主(クリニック)が自らすすんで交付すべきと、下記のように所得税法の規定があります。
(財務省令で定めるところにより当該税務署長の承認を受けていない場合を除く)。
所得税法第226条 抜粋
(源泉徴収票の交付義務)
(1)居住者に対し国内において第28条第1項(給与所得)に規定する給与等(第184条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)に規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる給与等を除く。
以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票2通を作成し、その年の翌年1月31日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後1月以内)に、1通を税務署長に提出し、他の1通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。
ただし、財務省令で定めるところにより当該税務署長の承認を受けた場合は、この限りでない。
(2)居住者に対し国内において第30条第1項(退職所得)に規定する退職手当等(第200条(源泉徴収を要しない退職手当等の支払者)の規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる退職手当を除く。
以下この章において「退職手当等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払を確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票2通を作成し、その退職の日以後1月以内に、1通を税務署長に提出し、他の1通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。
この場合においては、前項ただし書きの規定を準用する。
所得税法242条 抜粋
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
(6)第225条第2項に規定する通知書若しくは第226条第1項から第3項までに規定する源泉徴収票をこれらの書類の交付の期限までにこれらの規定に規定する支払を受ける者に交付せず、若しくはこれらの書類に偽りの記載をして当該支払を受ける者に交付した者又は第225条第3項若しくは第226条第4項の規定による電磁的方法により偽りの事項を提供した者
交付義務のあるクリニックが源泉徴収票を発行しないということであれば、退職したスタッフが、退職先の所轄税務署に源泉徴収不交付の届出を提出することにより、税務署より指導が入ることとなります。
まとめ
「面倒くさいから」や「小規模のクリニックだから」などという理由から源泉徴収の作成や交付を行わないクリニックは、所得税法違反にあたります。納税者本人ではなく、クリニックが処罰されることになるので注意しましょう。
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