クリニックに「就業規則」が必要な理由とは?
1.はじめに
就業規則を制定し、周知することで、クリニック運営にどのようなメリットをもたらすのかを紹介します。
2.就業規則が必要な理由
「従業員10名以上の事業所では就業規が必要」とよく言われます。より正確には「10名以上の事業所では、作成した就業規則を労働基準監督署へ届け出ることが必要」ということです。就業規則は一言でいえば、クリニックとスタッフの間での「契約書」です。スタッフ雇入れ時には「雇用契約書」を取り交わすと思いますが、そこに記載されている内容は、あくまでも主な労働条件です。詳細な契約内容・ルールは、就業規則に記載することになります。
平常時に就業規則を見ることはないと思いますが、スタッフに何かあった際には必要な局面が多々出てきます。
例えば、スタッフが病気等で長期間の休みが必要となった場合には「休職」することになります。しかし、その休職の限度期間や復職の判断基準などは就業規則の定めによります。何かあってからルールを設定する「後出しジャンケン」的な対応はできないため、クリニックとしてはある程度就業規則の内容を検討・把握しておくことが重要です。
3.就業規則がもたらすメリット
また、クリニックでは中途採用が比較的多いため、前職と「職場のルール」が異なることがあると思います。そのため、いわゆる「服務規程」を整備して、雇入れ時にきちんと自院のルール(身だしなみ・患者さん対応・職場協調など)を説明していれば、認識のギャップを予め防止することが可能です。
助成金活用においては、就業規則の内容が問われるケースが多くあります。例えば「キャリアアップ助成金」(非正規職員を正職員に転換など)では、正職員転換に関する規程が求められます。その他にも「両立支援等助成金」(育児休業者の円滑な復帰支援、育休者の代替要因確保など)では、育児休業規程が現行の育児介護休業法に合致しているかが問われます。
人事労務に関しては、法改正が多く、今年も4月と10月に育児介護休業法の改正、4月にいわゆるパワハラ防止法の施行が全ての規模の事業所を対象に実施されます。普段はあまり気にかけない就業規則ですが、もう何年も改定をしていなかったり、内容をよく把握していなかったりするのであれば、見直しを行っておくべきかと思います。
4.最後に
クリニックにはスタッフとの信頼関係が大切ですが、その関係はあくまでも「雇用契約」がベースになっています。もちろん、スタッフとの日頃のコミュニケーションが最も重要ですが、きちんと自院のルールを定めて、そのルールをきちんと周知しておくことも信頼関係につながると思います。
これからの時代には、人事労務が重要な経営課題の一つです。就業規則に限らず、今後の人事労務施策を考えるきっかけにしていただければ幸いです。
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