オンライン資格確認で使える補助金と圧縮記帳
Contents
1.はじめに
今回は度々お問い合わせを頂いておりますオンライン資格確認制度について、オンライン資格確認を導入するための補助金と、税制上の圧縮記帳の取り扱いについてご紹介したいと思います。
2.オンライン資格確認制度とは?
オンライン資格確認制度とは、医療保険の保険資格をマイナンバーカードを利用してオンラインで即時に確認できる仕組みのことです。この制度により医療機関や薬局での業務負担の軽減につながるものと考えられます。また利用者にとっても受付手続きがスムーズとなりますので、医療機関と患者双方にとってメリットがあります。
3.オンライン資格確認の導入補助金について
オンライン資格確認の導入にあたっては、引き続きオンライン資格確認関係補助金が利用できます。令和3年3月末までの加速化プラン(全額補助)は終了をしていますが、現在でもクリニックであれば、事業額の4分の3について補助金の対象となります(32.1万円を上限)。
詳細は下記のとおりです。
※ 厚生労働省HP「オンライン資格確認導入について」より
補助対象は、
①資格確認端末のほか、②ネットワーク環境の整備、③レセコン・電子カルテ等の既存システムの改修等
となります。
手続きについては、
①オンライン資格確認の設備導入後(医療機関等向けポータルサイトにログインしオンライン資格確認の運用開始日の入力まで完了していること)
②システムベンダーに等に費用を精算して、
③補助金申請(システムベンダーへの領収書や内訳書が必要となります)
の流れとなります。
補助金申請は、医療機関等向けポータルサイトより電子申請が可能です。
4.法人税法上の圧縮記帳の対象か?
補助金は法人税の課税対象であるため、ただ受領しただけでは補助金の約30%を法人税として納付しなければならなくなります、つまり受領しただけで放っておくと補助金の手取り額が7割程度となってしまうということです。
投資を促進するための補助金に”税金がかかることにより投資が進まない”となると本末転倒となります。そこで法人税法には「圧縮記帳」という制度があります。
圧縮記帳とは、大まかに言えば、国庫補助金等で取得した資産を一発で経費に落とすことにより、その経費と補助金の利益を相殺し税金がかからないようにできる制度です(厳密には細かな経理要件や申告要件があります)。
オンライン資格確認関係補助金は、国庫補助金等に該当するため、圧縮記帳の対象になると考えられます。
5.圧縮記帳をした方が良い場合とそうでない場合
圧縮記帳について注意すべきことは、この制度を利用するかどうかは任意となっていると言うことです。
制度を利用せずに申告すると、「制度を利用しないことを選択した」とみなされます。後から適用して申告をやり直すことはできません(当初申告要件)。納税申告書を作成する際には顧問税理士とのコミュニケーションが重要となりますのでご注意下さい。
とは言え、補助額が少額のものについてはその効果も限定的です。影響が少ないものについて制度を利用せずに通常の償却計算を行うことは実務上もよくあります。
圧縮記帳については、オンライン資格確認関係補助金に限らず、補助額が莫大なその他の補助金等についても適用の対象となりますので、制度の特性を理解した上で、補助金の種類や補助額に応じて、適用するか否かの経営判断が重要になると考えられます。
6.個人事業の場合はどうなる?
まれに「個人事業では圧縮記帳の適用がない」との話を耳にすることがあります。たしかに所得税法には圧縮記帳の規定はありませんが、同様の効果をもつ「総収入金額不算入の特例」があります。所得税の申告書に一定の事項を記載することにより「国庫補助金等のうち、固定資産の取得にあてた金額相当額を総収入金額に算入しない」とする特例です。
経費として落とすか、収入から控除するかの違いはありますが、補助金に対して税金がかからなくするという意味では同様の効果があります。
7.まとめ
圧縮記帳に限らずですが、補助金と税金が関連する場面は多々あります。また、投資に関しては人材に対する投資、物に対する設備投資ともに税制優遇措置が講じられています(所得拡大税制や投資促進税制など)。
補助金の利用や設備投資の効果が最大限発揮されるよう、その都度顧問税理士にご相談頂ければ幸いです。
オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係
医療機関等向けポータルサイト
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/
▼参考記事
補助金の受給時に活用できる会計処理「圧縮記帳」とは?
https://www.upp-medical.com/column/clinic-management/4727/
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