永年勤続表彰金制度の取り扱いはどうなる?
1.はじめに
長く勤めてくれた方に支給する永年勤続表彰金。税務上は原則として給与課税されるものですが、一定の要件を満たした場合は、福利厚生費として処理が可能です。
また今回は社会保険上の取り扱いについても確認してみましょう。
2.所得税の取り扱い
クリニックの中の福利厚生制度の1つで、永年勤続表彰制度を導入されているところもあるでしょう。通常、永年の勤続を表彰して現金を支給した場合、本人に給与課税されることになります。ただし、以下の3つの要件をすべて満たせば、福利厚生費として処理することが可能となります。
①勤続年数や地位などに照らし、社会一般的にみて相当な金額以内であること
②勤続年数がおおむね10年以上の人が対象であること
③同じ人の2度目以降の表彰の場合は、前回からおおむね5年以上あいていること
以上、3点です。
本要件は、永年勤続者に現金を支給する場合だけでなく、旅行券や商品券を支給した場合にも同様の取り扱いとなります。
ここで①について補足ですが、「社会一般的にみて相当な金額」とは漠然として曖昧な表現ですが、参考にできる事例がありますので、紹介します。
日本放送協会(NHK)が旅行券の贈呈について国税庁へ照会した事例では、次の金額なら「相当な金額」の範囲内であると認められています。
・支給対象者が満25年勤続者で10万円相当の旅行券
・満35年の勤続者で20万円相当の旅行券
3.社会保険の取り扱い
ここで社会保険とは、健康保険と厚生年金を総称したものをいいます。社会保険上、報酬の定義に該当した場合は、社会保険料がかかることとなります。
この点、日本年金機構の事例集に以下の通り記載されています。
Q.事業主が長期勤務者に対して支給する金銭、金券又は記念品等は報酬等に含まれるか
Answer
次のすべてを満たす場合は、原則として報酬や賞与には含まれず、保険料の対象とする必要がありません。
①表彰の実施目的が、福利厚生や長期勤務の奨励であること
②表彰の基準は、勤続年数のみを要件として、一律に支給されること
③社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えておらず、表彰の間隔がおおむね5年以上であること
この要件の中に満たさないものがある場合は、永年の勤続を表彰するものであるという性質を十分確認した上で、総合的に判断する必要があると言えるでしょう。
4.最後に
永年勤続表彰金制度は福利厚生の一環として採用することで、スタッフとクリニックの信頼関係が深まります。また従業員のモチベーションアップや離職防止につながることでしょう。ご不明な点がありましたら税理士法人アップパートナーズまでお尋ねください。
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