セキュリティ対策の営業電話・メールに潜む落とし穴

1.セキュリティ対策のためという営業電話や営業メールに潜む落とし穴

近年、医療機関における個人情報の保護は、ますます重要な課題となっています。診療データや患者さんの個人情報を適切に管理するために、セキュリティ対策は必須です。しかし、対策を講じるための提案をしてくる業者の中には、信用できるかどうか不透明なケースも存在します。今回は、実際によく耳にする営業電話や営業メールに潜む落とし穴と、その対策方法について解説します。

2.営業電話での「大手企業名」戦略の実態

医療機関向けに日々届く営業メールや電話の中には、「NTT関連」や「大手通信企業の代理店」といった、知名度の高い企業名を持ち出すものが多くあります。確かに、実際に大手企業の関連会社であれば信頼感は得られやすいですが、実情としては、単に信用を誘うためにあえて大手企業名を冠している場合がほとんどです。たとえば、「NTTの代理店」「NTTの関連会社」といった表現は、実際の業務内容やサービスと直接的な関係が薄い場合が多く、単なる口先だけの話である可能性があります。
このようなケースでは、業者はまず電話口で自社を「大手企業関連」としてアピールし、安心感を与えようとしますが、その後の具体的な説明や実績、導入実績の提示がない場合は要注意です。つまり、企業名だけに惑わされず、具体的な根拠や実績をしっかり確認することが必要です。

ちなみに、NTTのグループ会社というのは、NTTグループの公式サイトに明記されています。（https://group.ntt/jp/group/gnavi/）NTT関連を名乗る業者の場合は、「NTTグループの公式サイトに掲載されている企業かどうかを確認しておくので、また後日お電話ください」と言って企業名だけ聞いておくようにするのもよいかと思います。

3.セキュリティ対策機器の営業

内容の精査が重要

最近特に増えているのが、医療機関のセキュリティ対策を謳ったネットワーク機器の設置提案です。患者さんの個人情報を扱う医療機関では、万全のセキュリティ対策が求められます。しかし、業者側は営業のために「最新鋭のセキュリティ機器」「業界標準以上の保護機能」といった魅力的な言葉を使い、実際にその機器が必要かどうか、適切な価格かどうかを曖昧なまま契約に持ち込もうとするケースがあります。

まず、営業担当者が自社の実績や導入事例を具体的に示さない場合、あるいは過去に自院で既に取引があったかのような話術で安心感を演出している場合は、一度冷静に立ち止まって考えるべきです。たとえば、「以前にも工事を行った経験がある」といった主張だけでは、具体性に欠けるため、後日しっかりと企業名や実績を確認するようにしましょう。

業者の信頼性を見極めるためのポイント

企業名の確認とネット検索 – 営業電話で大手企業名が出た場合は、その企業のグループ企業一覧を確認しましょう。NTTグループなどは公式ウェブサイトにグループ企業一覧が掲載されており、そこで実際に掲載されているかどうかをチェックすることが重要です。また、企業名でネット検索を実施し、口コミや評判を調べることで、悪徳業者であれば否定的な評価が多く出ている可能性が高いです。

見積もり書の内容確認

実際に見積もりを取る段階になった場合、見積書に記載されている機器の型番や仕様を自院で調べ、通常価格や中古市場での相場と比較してみましょう。あまりにも提示された価格に乖離が見られる場合は、交渉の余地があるか、または詐欺的な可能性を疑うべきです。また、高額になるとリースを組むことも多いと思いますが、リースを組んだあとに契約しなければよかったとなっても、時すでに遅しということも多いです。十分注意しましょう。

専門家や同業者の意見を取り入れる

セキュリティ対策機器は、専門知識がなければ判断が難しいものも多いです。営業の話をそのまま鵜呑みにせず、できれば信頼できる専門家や、同業他院で既に導入している先生に相談してみるのが得策です。自院だけでなく、他の医療機関で同様の提案があったかどうか、または実際にどのような対策が講じられているかを情報交換することが、より安全な選択につながります。

4.まとめ

医療機関におけるセキュリティ対策は、患者さんの個人情報を守るために不可欠なものです。しかし、対策を提案してくる業者の中には、単に営業成績を上げるために大手企業の名前を利用しているケースが多く、安易な契約は後々トラブルの元となります。業者の信頼性を見極めるためには、まず企業名の正確な確認とネット上での評判チェック、そして見積もり内容の詳細な精査が必要です。また、専門家や同業者との情報交換を通じて、客観的な判断材料を増やすことも重要です。こうした基本的なスクリーニングを徹底することで、不必要なリスクを回避し、医療機関として最適なセキュリティ対策を講じることができるでしょう。

医療現場では、患者さんの信頼を守ることが最も大切です。今一度、業者からの提案に対して慎重に対応し、確かな情報に基づいた判断を行うよう心掛けてください。

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