医療法人設立を検討するときの大いなる疑問3選
Contents
1, はじめに
医院の業績が順調に伸びてくると、税理士やコンサルタントから医療法人設立を提案されることがあります。提案の通り様々な経済的メリットがあることは理解できるのですが、先輩開業医で業績が自院よりも良いのに医療法人にしていないのはなぜか?どこかにデメリットがないのか? 先輩開業医に相談したりインターネットで調べたりされると思います。
今回は、医療法人設立について多くの皆様が抱かれる疑問を3つに絞って解説していきます。
2, 大いなる疑問3選
疑問1:医療法人に蓄えた利益(財産)は、国に没収されるのでは?
この疑問は、医療法人の運営規程である「定款」に以下の記載があることから生まれるものです。
【モデル定款】一部抜粋
本社団が解散した場合の残余財産は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、次の者から選定して帰属させるものとする。(1)国
(2)地方公共団体
(3)医療法第31条に定める公的医療機関の開設者
(4)郡市区歯科医師会又は都道府県歯科医師会(一般社団法人又は一般財団法人に限る。)
(5)財団たる医療法人又は社団たる医療法人であって持分の定めのないもの
この文章をもう少し分かりやすい言葉でいいますと「医療法人をたたむときに残った財産は、合併・破産による場合を除き、国か地方公共団体・公的医療機関・医師(歯科医師)会のいずれかに渡します」というものです。
結論としては、そのような事態は考えられません。
毎年の業績に応じた役員報酬をしっかり設定し、勇退時に理事全員が適切な退職金をとることでこのリスクは回避できます。
この適切な退職金とは、全額経費にできるかどうか判断する税法にあります。
最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率
実務上、この範囲であれば自由に支給可能です。将来蓄えられる財産を試算しながら、役員報酬を設定することで備えることができます。
疑問2:医療法人ではお金を自由にできない?
医療法人は公益性が比較的の高い法人と定義付けられているため、理事が私的に医療法人の利益及び財産を流用してはならないとされています。そのため医療法人ごとに監事を選任し、理事の運営状況を監査・報告するという役割を担っています。
法人から理事に対して、無利子・無期限での金銭の貸し付け及び引出しはできなくなりますが、適切な利益を支払い、返済計画をたてておけば問題ありません。また多額な私的資金を例にあげると、子供の入学時の教育費、マイホーム頭金などでしょうか。
このような資金に対応するためにもライフプランを踏まえた理事報酬の設定が必要ですね。
疑問3:個人事業時代の借入金は引き継げない?
原則としては、設立時に個人事業の借入金のうち、運転資金に該当するものは引き継げないとされています。開業時の設備投資に係る借入金は、引き継ぎ可能ですが、設備と借入金をセットで医療法人へ引き継ぐことになります。実務上は、院長個人がそのまま設備も借入金も所有し続け、医療法人へリースする形態ととることが多いです。
特に歯科医院など消費税の課税事業者の場合は、思わぬ課税を避けるため、設備や借入金を引き継がないようにします。また設備の簿価と比較して借入金残高が大きく上回っている場合には、医療法人の財務状態が悪くなるため引き継がないようにします。
3, 最後に
以上、医療法人設立を検討する皆さまが必ず抱かれる疑問3選でした。
上記以外に様々なご質問をお受けいたしましすので、お気軽にお問い合わせください。
- 病院・クリニックの方へ
- 歯科の方へ
- 新規開業をお考えの方へ
- 医療法人設立をお考えへ
- 事業承継・相続・売却をお考えの方へ
グループのサービスご紹介