医療法人の理事長ができる退職金対策とは?
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はじめに
法人保険は別名「団体保険」とも呼ばれており、個人で加入する保険よりも規模が大きいところが特徴です。法人保険では単一の契約で法人に属する人間(社員)を一括で保障することができますので、法人に所属している間は会社役員から一般社員まで均一の保障を受けられます。企業経営者用に開発されたのが、保障期間が長く加入期間中は保障額が一定といった特徴を持つ「長期平準定期保険」です。それでは、医療法人の場合、理事長先生が退職金の対策として多く活用されている「長期平準定期保険」について考えていきましょう。
医療法人なら加入したい長期平準定期保険とは?
長期平準定期保険は、主に法人契約として利用される保険です。契約者は法人、被保険者は経営者・役員、死亡保険金受取人は法人というパターンです。
通常の定期保険は保険期間が10年や20年ですが、長期平準定期保険は定期保険の中でも保険期間が長く、99歳や100歳まで保障が続き、終身保険に近い死亡保障が得られます。
長期平準定期保険とは簡単にいうと保険期間が100歳までなど文字通り保険期間が長い定期保険のことを指します。
具体的な要件は次のようになります。
保険期間満了時の年齢が70歳を超え、かつ(保険加入年齢+保険期間×5)>105
という計算式になりますが、つまり、40歳の人であれば保険期間が70歳以上の契約になれば長期平準定期保険となります。
その特徴としては保険料を1/2損金にすることができ、解約返戻金が貯まっていきます。
その貯まっているお金が解約返戻金として、ゆっくり上昇していき、65歳~75歳ごろにピークがきます。解約返戻金のピークが長く続くので、将来の役員退職金を準備するのに適しているため、長期平準定期保険は退職金の準備としても多く活用されています。
医療法人なら加入したい長期平準定期保険のメリットとは?
長期平準定期保険は、保険料の半分を損金算入しながら、資産を増やすことができるために節税効果が見込めます。
長期平準定期保険は、30~40年もかける時間がなく、5~10年後には退職金が必要な場合は、逓増定期保険を使われるところも多いです。
医療法人の場合、被保険者は理事長が一般的ですが、若くて健康な被保険者でしたら解約返戻率が高くなります。
保険加入の目的は退職金積立と保障の充実です。医療法人は加入年齢や保障期間によって経費にできる割合が決められています。個人事業主では経費になりません。
解約返戻金が貯まる保険は資産計上する必要がありますが、長期平準定期保険は保険期間の当初6割の期間は保険料の半分を定期保険料として損金算入することが可能で、そのうち半分は、前払保険料として資産計上します。
半分が損金(経費計上できる)になるのが一般的なので、法人税等の実行税率が30%としたら、15%は節税になっていると計算できます。
それでは、40歳で契約し、70歳で退職するケースで、シミュレーションをしてみましょう。
70歳時点で95%の解約返戻率がある保険商品に年間300万円の掛金を支払った場合、毎年150万円経費になります。
法人税を30%で計算すると毎年45万円節税効果があります。
30年で累計9.000万円を払い込み70歳時点で解約をすると8,550万円戻ってきます。これを退職金として受け取ります。
退職金は役員報酬と違って、課税の計算方法が異なり課税される部分が少ないです。1/2にしか課税されないのが大きなポイントです。
退職所得の金額は、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額
退職所得の計算式
1. 年数20年以内の場合 退職金 − (40万円×勤続年数) ÷ 2
2. 年数20年以上の場合 退職金−(70万円×(勤続年数-20年)+800万円) ÷ 2
退職所得控除額の計算式
1. 年数20年以内の場合 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には80万円)
2. 年数20年以上の場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
シミュレーション1 勤続年数が10年2ヶ月の人の場合の退職所得控除額
40万円×(勤続年数) = 40万円×11年 = 440万円
勤続年数が10年2ヶ月の人の場合、勤続年数は11年。(端数の2ヶ月は1年に切上げ)
シミュレーション2 勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額
800万円+70万円×(勤続年数30年-20年)=800万円+70万円×(10年)=1,500万円
(注)
1 障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額となります。
2 前年以前に退職所得を受け取ったことがあるとき又は同一年内に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあります。
このように、長期平準定期保険は、税務的にメリットがあることはもちろんですが、保険本来の目的は保障機能であり、万が一の時のリスク回避として必要なものです。
例えば死亡保険金1億円に加入していれば、経営者に万が一のことがあったとき、その1億円を使って経営を立て直し資金にすることができます。 経営者に不測の事態があると銀行や取引先などからの信用が落ち、融資が止められてしまうなど、経営が危機に立たされることもあります。また、役員や社員への給与や賞与が十分に支払われない可能性もあります。 1億円あれば、経営を立て直し資金にすることができます。
医療法人なら加入したい長期平準定期保険のデメリットとは?
長期平準定期保険には、2つのデメリットがあります。法人保険に加入をして後で損をすることがないように押さえておきましょう。
デメリット1 手元現金が減るのでキャッシュフローに影響をおよぼすリスク
法人保険に加入をすると当然保険料を保険会社に支払わなければいけません。預金と違って引き出したりすることはできません。
例えば年払保険料が年間300万円の場合、単純に年間300万円がキャッシュアウトしてしまいます。
つまり、毎年保険料の支払いによって、医院の現金が減りキャッシュフローに影響を及ぼします。
保険会社に解約返戻金という形でお金が貯まっていきますが、早期(3年ほど)で解約してしまうと50%~80%しか戻らず、大きな損となります。
保険料がお得になる年払い契約をされることが多く、その分預金が減りますので、キャッシュフローを考慮した掛金設定にされることをおすすめします。
デメリット2 退職金の課税制度が見直されるリスク
退職金にかかる税金は分離課税で、税負担の軽減が図られています。平成25年以降の税率による計算式は、次のようになっています。
退職所得の金額 =(退職金 - 退職所得控除額)×0.5
勤続年数5年以下の役員等の平成25年分以後は、退職所得の金額 = 退職金 - 退職所得控除額 となっていますが、
将来、税制の改正などで退職金の課税制度が一変すると、税率が上昇してしまうかもしれないというリスクがあります。
まとめ
一般の企業と比較すると、歯科医院・病院・クリニックなどの医療法人は、30年~40年後の見通しがつきやすく、毎年決まった利益を出しやすいので
長期計画をしっかりと立て、キャッシュフローのシミュレーションをしながら、こうした有利な保険などの金融商品も、うまく活用することをおすすめいたします。
以上、医療法人にとっての長期平準定期保険について、もっと詳しく知りたい、医療法人化について的確なアドバイスをご希望の方はご相談を随時お受けしておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。
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