非正規労働者の正社員転換措置と運用時の注意点
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1, はじめに
令和2年4月1日(当初は大企業のみに適用)にパートタイム・有期雇用労働法が施行され、令和3年4月1日には中小企業への適用も始まります。また、同一労働同一賃金については、各医療機関においても施行に向けて準備を進めているところが多いと思います。
労働契約法20条において、不合理な労働条件は禁止されており、正社員と非正規社員の不合理な待遇格差をめぐって既に最高裁判例がいくつも出ています。その中で、パートタイマーから正社員への転換制度への注目が高まっています。
そこで今回は、法律で求められる「非正規労働者の正社員転換措置と運用時の注意点」を確認します。
2, 正社員転換措置
会社が従業員をどのような雇用形態で雇い入れるかは自由ですが、パートタイム・有期雇用労働法では短時間労働者や有期雇用労働者(以下、非正規労働者)に対し、通常の労働者(正社員)へ転換する措置を設けることを義務づけています。
具体的に、以下の①~④のいずれかを実施することが必要です。
①正社員を募集する場合、その募集内容を対象者に周知する
②正社員のポストを社内公募する場合、対象者にも応募する機会を与える
③正社員へ転換するための試験制度を設ける
④その他正社員への転換を推進するための措置を講ずる
3,転換措置の周知方法
正社員転換措置は、会社が講じている措置の内容を、非正規労働者にあらかじめ周知することが求められます。
周知方法としては次のようなものが挙げられます。
①就業規則に記載する
②労働条件通知に記載する
③事業所内の掲示板で掲示する
④社内で資料を回覧する
⑤給与明細書に資料を同封する
⑥社内メールで告知する
実際に正社員を募集したり、社内公募したりする際の周知は、事業所内での掲示や資料の回覧、人事考課面談時での希望聴取などが考えられます。
4, 運用時の注意点
正社員の採用が新規学卒者のみとなっているようなクリニックでは、応募できる人が限定されているため、正社員転換措置を講じているとは言えません。
また、正社員への転換や受験する要件として、勤続期間や資格等を設けることがあります。事業所の実態に応じていれば問題ないものの、必要以上に厳しい要件を設けている場合、措置を講じているとは認められない場合もありますので、注意が必要です。
5, 最後に
法律では、正社員転換措置を講ずることが義務であり、結果として正社員へ転換することまでは求めていません。しかし、正社員への転換措置への注目が高まり、その運用は重要性を増しています。
周知のみで応募しにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないか確認し、問題があれば是正しましょう。
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