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2026/07/09

スタッフの定着率向上に効く!福利厚生としての「社宅」導入と税務のポイント

1.はじめに

人材の採用と定着が課題となっているクリニックは少なくありません。給与を引き上げるだけでなく、福利厚生として「社宅」を用意することは、職員にとって魅力的な待遇となり得ます。しかし、その渡し方を誤ると、本来は福利厚生であったはずの社宅費用が「給与」として課税され、源泉徴収や社会保険の対象となってしまいます。今回は、スタッフに社宅を貸与する場合の税務上の取扱いについて整理します。

2.ポイントは「賃貸料相当額」を受け取っているか

社宅を職員に貸与する場合、医院(または医療法人)が職員から一定額以上の家賃を受け取っていれば、その社宅の貸与は給与として課税されません。この基準となる金額を「賃貸料相当額」といいます。

具体的には、職員から受け取っている家賃が賃貸料相当額の50%以上であれば、賃貸料相当額と実際に受け取っている家賃との差額は給与として課税されません。一方で、無償で貸与した場合は賃貸料相当額の全額が、相場より著しく安く貸した場合はその差額が、給与として扱われ課税対象となります。

3.賃貸料相当額の計算方法

賃貸料相当額は、次の合計額で計算します。医院が所有する建物を社宅とする場合も、大家から借り上げた建物を社宅とする場合も、同じ計算式を用います。

① その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%

② 12円 × その建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡

③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

固定資産税の課税標準額は、市区町村が管理する固定資産課税台帳で確認できます。借り上げ社宅の場合は、貸主(大家)に確認するか、固定資産課税台帳を閲覧して把握します。実務上は、実際の家賃の50%程度を職員から徴収しておけば、差額が給与課税される心配は少ないとされています。

4.やってしまいがちな誤り ― 「住宅手当」では社宅にならない

最も注意したいのが、現金で「住宅手当」を支給したり、職員が自分名義で契約した住宅の家賃を医院が肩代わりしたりするケースです。これらは社宅の「貸与」には当たらず、支給額の全額が給与として課税されてしまいます。

給与課税を避けるためには、賃貸借契約の名義を医院(医療法人)とし、医院が借主として家賃を支払い、職員からは賃貸料相当額以上を徴収するという「現物貸与」の形を整えることが重要です。「手当として現金で渡すのはダメ、現物で貸すのはよい」という違いが、最もつまずきやすいところです。


5.受け取る家賃による取扱いの違い

職員から受け取る家賃 給与として課税される金額
無償(0円) 賃貸料相当額の全額
賃貸料相当額の50%未満 賃貸料相当額と受取家賃との差額
賃貸料相当額の50%以上 課税されない


6.役員社宅・消費税についての補足

なお、院長先生など役員に社宅を貸与する場合は、職員の場合とは計算方法が異なります。建物の規模(小規模な住宅かどうか)や、いわゆる豪華社宅に該当するかどうかによって賃貸料相当額の算定方法が変わるため、別途確認が必要です。

また消費税については、社宅として職員に貸し付ける部分は住宅の貸付けとして非課税となり、医院が借り上げる際に支払う家賃も非課税仕入れとなります。

7.まとめ

社宅の貸与は、職員にとって手取りの実感が大きい福利厚生であり、採用力・定着率の向上に効果的です。しかし、「住宅手当」として現金で支給すると全額が給与課税となり、せっかくの節税メリットが失われてしまいます。賃貸借契約の名義を医院とし、賃貸料相当額以上を職員から徴収するという形を整えることが、給与課税を避けるための要点です。導入を検討される際は、賃貸料相当額の計算や契約形態について、お気軽に当事務所までご相談ください。

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