災害時に活用できる税務上の手続き
更新日:2026/07/31
公開日:2021/8/24
1. はじめに
令和8年7月28日に発生した令和8年熊本地震につきまして多くの事業者の方々より被害のご報告を頂いております。亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回は所得税法と法人税法を中心に災害等にあった場合の税法上の取り扱いについてご案内致します。
2. (個人)所得税確定申告における雑損控除
個人におきましては災害等により損失を受けた場合には所得税法の規定による雑損控除の適用を受けることができます。所得税の確定申告書に被災損失額を計算して添付することにより、他の所得金額と相殺することができます。これにより所得税の還付ないし減額を受けることができます。控除しきれない場合には3年間(特定非常災害等は5年間)繰越しすることが可能です。
適用を受けるためには確定申告で計算書類を作成しますが、その計算において住宅の損壊の程度等により被害割合を算出することになっております。地震による被害の場合は、全壊・半壊・一部破損といった損壊区分に応じた被害割合を用いることになります。災害時において実情として困難な場合が多いとは思いますが、被害当時の状況を写真に取るなど、資料を残しておくことが税務上有益となります。添付が義務付けられている訳ではありませんが、罹災証明書を取得できれば手続きがスムーズです。今回の地震では被災市町村による住家被害認定調査に基づき罹災証明書が発行されますので、早めに申請されることをお勧め致します。家財については家族構成から概算で計算することもできます。
3. (個人)災害減免法による減免
また雑損控除と選択適用にはなりますが、災害減免法による所得税額の軽減免除を受けることも可能です。災害減免法の適用要件は、災害による損害額が時価の2分の1以上で、かつ、所得金額の合計額が1,000万円以下の場合に適用することができます。計算方法も容易で所得金額に応じて以下のように軽減または減免されます。
| 所得金額の合計額 | 軽減または減免される所得税 |
|---|---|
| 500万円以下 | 所得税の全額 |
| 500万円超750万円以下 | 所得税の2分の1 |
| 750万円超1,000万円以下 | 所得税の4分の1 |
損失額が大きく翌年度への繰越が必要な場合や、所得の制限を受ける場合には雑損控除を、そうでない場合には手続きが簡便な災害減免法を、と使い分けると良いかと思います。
4. (法人)法人税法における災害損失欠損金の繰戻しによる還付
法人においては災害等による損失は特別な手続きを取らずとも会計上損失の額に計上することにより、他の利益と相殺されるため結果的に法人税が減額されます。ただし、当該損失額が災害等があった事業年度の利益と相殺してもなお赤字となる場合には、その赤字額を前期の黒字額と相殺して前期に納付した法人税から還付を受けることができます。この還付を受けるための一連の手続きを欠損金の繰戻し還付と言い、青色申告が要件となります。
繰戻し還付は通常の赤字(青色欠損金)にも認められていますが、災害損失欠損金の繰戻し還付は、前期の黒字と相殺してもなお赤字が残る場合には、前々期の黒字額と相殺して前々期に納付した法人税からも還付を受けることができる点で異なります。
イメージとしましては
①青色欠損金を前期の黒字とぶつける
②災害損失欠損金を前期の黒字とぶつける
③なお赤字が残る場合は災害損失欠損金を前々期の黒字とぶつける
といった流れになります(事業年度の月数により上記の取り扱いがことなります)。
還付を請求しようとする法人は一定の事項を記載した還付請求書を所轄税務署長に提出しなければなりません。これらに災害の詳細等を記載する必要がありますので、個人と同様に被害当時の状況を資料に残しておくことが税務上有益となります。また中間申告によって還付をうけることが可能です。
5. (法人)災害損失特別勘定
その他にも、災害により被害を受けた棚卸資産、固定資産の修繕費等について、災害のあった日から1年以内に支出する費用を適正に見積もりその見積額を損失引当金として損金経理した場合に、損金の額に算入できる制度があります。このこと災害損失特別勘定と言います。
災害損失特別勘定には被災資産の取壊しや除却費用、損壊を防止するための費用、被害拡大を防止するため緊急に必要な措置を講ずるために費用などが含まれます。また合理的な見積もり方法とは、修繕等を行うことが確実に見込まれる被災資産について、修繕を請け負う建設業者などが作成する見積額等によります。①これらの見積額と②被災直前の帳簿価額から処分見込額等を控除した額、とのいずれか多い金額が繰入限度額となります。
災害損失特別勘定は、法人税申告書への別表の添付と、損金経理を要件としています。また繰入れた損失額は災害損失欠損金として繰戻し還付の対象となります。保険金等により補填される額を控除する場合控除しなくて良い場合など、複数に渡って高度な税務判断を要します。雑損控除も所得金額によっては所得税法でなく災害減免法による所得税の軽減のほうが有利になる場合があります。申告の際には最もメリットのある手続きを選択する必要がございますので、合せて専門家へご相談頂くようお願い申し上げます。
なお、被災により申告・納付が期限までに困難な場合には、所轄税務署へ申請することにより国税の申告・納付期限の延長が認められる場合があります。地域指定による一括延長が行われることもありますので、国税庁及び所轄税務署の公表内容をご確認ください。
- 病院・クリニックの方へ
- 歯科の方へ
- 新規開業をお考えの方へ
- 医療法人設立をお考えへ
- 事業承継・相続・売却をお考えの方へ
グループのサービスご紹介






















